ノーゲストの午前中、初老の男性客が1人で4人がけのテーブル席に座った。メニュー表を開き検討している。いつものありふれた光景だ。
私はいつも通り餃子を巻きながら、オーダーが決まったそぶりを見せたら注文を聞きに行こうと注意しながら仕込みをしていた。ラーメン屋の基本に忠実に5秒に一回チラ見しながら、注意を怠らず作業をしていた。
メニュー表を見るのをやめ、スマホを手にした。もしかしてオートリザーブを使うのか?だったら待つべきだな。なにしろオーダーが決まったから聴きに来いというアイコンタクトすら無い。
しかし、いつまで経ってもオートリザーブのシステムは反応しない。そのうちスマホをテーブルに置いた。あれ?いったいどういうことだ?
普通、お客様はスタッフに向かって「みそネギ!」と注文を言って来たり、声を出さなくても挙手したりアイコンタクトをしてきたりして、オーダーが決まった意思表示をする。私の方がオーダーが立て込んで調理に追われているわけでもない。なにせノーゲストで私はそのお客様を注視している。
しかし稀に、店員に声をかけることができないのか、他に理由があるのか意思表示を全くしない客がいる。そのパターンか?と思い客席へ行き、「お決まりですか?」と尋ねた。
「聴きに来るのが遅い!!」といきなり怒鳴られた。なるほど、この客は店員の方から頃合いを見計らって注文を聴きに来るのが当然だ。お客様は決まったか決まっていないかを店員に伝える必要など一切無い。あくまでも店員がちょうどいいタイミングで席まで聴きに来るべきだ。
それができない場合、叱責されても仕方ない。という考えをお持ちのようだ。分かった。分かったから二度と来ないでくれ。